ぬくもり藁工房の立ち上げ
乙事で造園業を営まれている三井一照さんは、冬仕事として、わら細工の事業をされています。この地域では、50年ほど前までは、どこの農家でも稲作の冬仕事としてわら細工をし、蓑や雪靴など生活に必要なものを手作りしていました。秋の収穫の後、稲ワラをあつめて、家畜の飼料にしたり、荒縄に編んでワラ細工に活用するなどして、田んぼの中の資源を有効、循環利用をしていました。しかし、現在では冬にワラ細工作業を行う農家はほとんどなくなってしまっています。
そのような中、三井さんは、45歳のときに脱サラをして、造園業に転進をし、さらに7年ほどまえから、わら細工工房を立ち上げられました。ワラ細工の技術は、両親や近所のワラ細工の技術者から学び、そして全国各地でワラ細工を行う方とネットワークを組む中で、身につけられました。
丁寧に作られたワラ細工の数々
現在では、正月の門松やしめ飾りの注文販売のほか、鶴や馬などの飾り物、わらじ等のワラ細工の製作実習などを行われています。
ワラ細工の魅力
「先人はよくこのような見事な編み方を見出したものだ」
三井さんは「ワラ細工の編み方、活用の仕方、材質としての質、どれをとってもすばらしい、先人はよくこのような見事な編み方を見出したものだ」と語られる。蓑は冬のレインコートとして使われていたが、雪も雨もとおさず、とても温かいすぐれものだ。雪靴も水がしみてこないし、使えば使うほどしなやかになり、材質としては強くなる。土を踏む感触を直接足で感じることができ、靴としても優れているという。現在雪靴はナイロンの機械で作成する工業製品にとってかわられていますが、ワラ細工の雪靴は、優れた素材で誰でも手作りできるものなのです。
また、米俵の技術もすばらしい。俵は、吸湿性、通気性にすぐれ、米をよりおいしく保存をすることができる。また、ふたは取り外しができるなど、何度も活用できる工夫がなされている。
ワラ細工の知恵を後世に伝えていきたい
ワラ細工の知恵を後世に伝えていきたい
三井さんの目標は、ワラ細工の魅力を後世に伝えていくこと。
ワラ細工の編み方について本になっているものはほとんどなく、手仕事で数年経験を踏むことで身につけていく必要があるとのこと。また、ワラ細工は、労賃を考えると経済性の高い作業ではない。しかし、自らが必要な生活必需品や生活を楽しくする飾りなどを、自らの田んぼから出たわらで自らが作成することができるという魅力がある。
このワラ細工という昔の知恵を引き継いでいくことを決心された三井さん、でも現在三井さんよりも若い世代でワラ細工作業をやっている人はいないという。三井さん曰く、「昔話でもしながら、子供たちと一緒にぜひワラ細工体験をしましょう」。
■インタビュアーの感想
富士見の宝、ワラ細工を後世に引きつぎ、健やかな人づくりをしていくために、ぬくもり工房でお母さんと子供のワラ細工ワークショップでも開催したいものですね。
- サンショーガーデン(ぬくもり藁工房 三照園)
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サンショーガーデン(ぬくもり藁工房 三照園)